本日iOS17がリリースされました。
iOS17にはさまざまな新機能が搭載されましたが、我々日本の点字ユーザーにとってとてもうれしい情報があります。
iOSには点字ディスプレイと接続して、画面に表示された内容を点字に表示したり、点字ディスプレイ上のキーボードからiPhoneに文字を入力する機能が備わっています。
しかしながら、これまでのiOSの日本語点字表示は日本語の点字の書き方の規則に従っていないため、その点字は非常に読みにくいものでした。
また、入力においては、点字ディスプレイ上からの点字入力動作が不安定で、漢字変換が行えなかったり、日本語文中に英数字を入力することができなかったり、また目的の位置に文字を入力することが困難など、多くの課題を抱えていました。
そのため、これまで日本のiPhoneユーザーで点字を使うユーザーはほとんどいなかったのではないかと思います。
しかし、そのことが、特に視覚と聴覚両方に障害がある盲ろう者が点字ディスプレイを用いてiOS機器を利用することは事実上不可能な状況におかれていました。
この状況を何とか改善できないものかと考え、我々は融資を集い、2019年に「iOSの日本語点字問題を改善する全国集会」を結成し、日本語点字問題を検証し、それに基づき要望書の作成、さらにはそれを英文に翻訳を行い、アップル社に提出する活動を始めました。
さらに、要望書を提出するだけでは、盲ろう者の置かれている困難な状況を理解していただけないと考え、2020年7月31日、及び2021年11月17日の2回にわたり、米アップル本社、及び日本支社に対してオンラインによる懇談を行い、日本語点字の入出力を改善していただけるよう申し入れを行いました。
しかし、2021年にiOS15、2022年にiOS16がリリースされましたが、残念ながら実用的に利用できるレベルまでの改善は見られませんでした。
やはり、日本のVoiceOverユーザーで、しかも点字という、ごく少数の意見など聞いてもらえないのだ…
ほとんどあきらめモードになっていました。
ところが、本日リリースされたiOS17では、日本語点字入出力が大幅に改善されていました。
また、日本語点字テーブルに、新たに「日本語NBSCテーブル」という新しい点字テーブルが追加されています。
この点字テーブルを使用すると、Windows のスクリーンリーダーのような正確な点字が表示されます。
私は、この点字出力を用いて、Kindle書籍の読書など試してみましたが、とても快適に点字による読書を楽しむことができました。
また、入力においても、点字ディスプレイ上のキーボードを用いて漢字かな交じり文の日本語の入力、また日本文中に英数字の入力を行ったりできるようになっています。
まだまだ改善していただかなければならない部分はありますが、アップル社が日本語点字入出力の改善に向けて取り組んでくれていることは、日本の点字ユーザーにとって朗報といえます。
今回の日本語点字機能は、iOS機器のみならず、iPadOS、MacOS、それからこれから登場するといわれているApple Vision Pro など、ほとんどのアップル製品に組み込まれるものと思われます。
このような機器が盲ろう者が利用できれば、外部との連絡、情報の入手、学習、就労など、多くの可能性がもたらされるものと期待されます。
iOS対応の点字ディスプレイをお持ちの方は、是非1度お試しいただければ幸いです。
そして、お気づきの点などありましたら是非ご意見をお寄せください。
1人でも多くの方の意見が寄せられれば、それだけよいものになっていくと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。