始めようDTM 第19回 セットアップ小節(1) 九曜 弘次郎  今回から数回に分けまして、セットアップ小節のお話をします。  セットアップ小節とは、音源を演奏させる曲に最適な状態を作り上げるもので す。通常MIDIデータを作成する場合、1小節目にセットアップ小節を儲け、実際 の曲データは2小節目以降から入力します。セットアップ小節が長い場合は、2 小節目も使用し、曲データは3小節目から入力を行うこともあります。いずれに しても、いきなり1小節目から曲データを入れないようにされた方がよろしいか と思います。  なぜセットアップ小節が必要なのかを説明するために、セットアップ小節の役 割を見てみましょう。  セットアップ小節には以下のような役割があります。  ・音源をリセットし、できるだけ初期状態にする。  ・各パートの音色や音量バランス、音の定位、エフェクトの設定など、曲に合 った音作りを行う。  まずは音源の初期化ですが、みなさんの音源は、今どのような状態になってい ますでしょうか。曲を再生したあとでは、音源に今再生していた曲の設定がその まま残っている場合がほとんどです。この状態で音源の初期化を行わずに他の曲 データを再生しますと、まえの曲の設定がそのまま残っているために、意図した 音で演奏が行われない場合があるのです。  また曲をネット上にアップロードして他の人に聞いてもらう場合、聞き手の音 源がどのような設定になっているのかが分かりません。同じ音源なのに、自分の 音源と相手の音源でなり方が違うといったことが起きる可能性があります。せっ かく作ったデータが自分の意図通りに聞いてもらえないのは悲しいことです。  このようなトラブルを防止するために、データの先頭には音源をリセットする ためのコマンドを入力しておき、音源を初期状態にしてから演奏に関する設定を 行うわけです。  つぎに曲に関する設定ですが、実際の演奏会にたとえるなら、だれにどの楽器 を演奏してもらうのか(音色の選択)、各パートの音量バランスはどのようにす るのか(ボリュームの設定)、他にはエフェクトの選択やかかり具合などといっ た作業を行います。 自分がプロデューサーになったような気分で設定しましょ う!!  さてこのセットアップ小節に入力するコマンドですが、実は音源によりかなり 異なるのです。まず初期化コマンドからして、ローランドのGS音源、ヤマハのXG 音源では全く違います。これは音源のマニュアルを見るしかないというのが正直 なところなのですが、視覚障害者にとっては厄介な問題です。  そこで、ここではネット上にアップロードされている音源のセットアップ小節 を参考にしながら、その使い方やどのようにして作られているかといったことも 含めて解説していきたいと思います。  なお、ヤマハのXG音源のものにつきましては、 私が使用しているものをFSW ディレクトリに入れておきましたので、XG音源ユーザーの方はこれをお使いくだ さい。  ローランドのGS音源ユーザーの方は、Niftyにあるものを利用します。  NIFTY/FMIDIORG/LIB 14 ------------------------------------------------------------------------ 83 PXB06240 94/11/03 4446 B SC88用曲データ・ヘッダー(SMF)/ヘムヘム/MID 82 PXB06240 94/11/03 5800 B SC88用曲データ・ヘッダー(R36)/ヘムヘム/R36 81 PXB06240 94/11/02 3328 B 曲データ・ヘッダー(RCP版)/ヘムヘム/RCP 80 PXB06240 94/11/02 2722 B 曲データ・ヘッダー(SMF版)/ヘムヘム/MID ------------------------------------------------------------------------  レコンポーザ Ver2.5F以降でSC-88以上の機種をお使いの方は82番を、SC-55 をお使いの方は81番をダウンロードしてお使いください。  それ以外のシーケンスソフトをお使いの方でSC-88以上の機種をお使いの方は 83番を、SC-55をお使いの方は80番をダウンロードしてお使いください。  各ファイルの説明は添付のDOCファイルを見ていただければ分かると思いま す。初めの方はコメントありのものを使用された方が分かりやすいと思います。  さて、解凍して現れたファイルをレコンポーザに読み込みます。レコンポーザ 3.0をお使いの方は、ファイルを読み込むときに拡張子(RCP/R36)を付けること で、旧レコンポーザ形式のファイルを読み込むことが可能です。  あとはエディット画面を開いていただくと、何やらいろいろなコマンドが記述 されているのが分かると思います。 Niftyからダウンロードしたローランド用の ものは、セットアップ小節が2小節にまたがっています。私が今回添付したヤマ ハのものは1小節に収めてあります。  それでは、簡単なところから説明していきましょう。  まず1トラック目のエディット画面を開いてみてください。するとおおよそ以 下のような感じになっていると思います。 ------------------------------------------------------------------------ MEAS STEP:NOTE K# ST GT VEL 1 1: 60 480 0 0 1 2:PgBnkMs 10 0 0 1 3:PgBnkLs 10 32 0 1 4:PROGRAM 10 0 1 5:VOLUME 10 7 100 1 6:PANPOT 10 10 64 1 7:EXPRESS 10 11 127 1 8:REVERB 10 91 40 1 9:CHORUS 410 93 0 (以下省略) ------------------------------------------------------------------------  上記に上げた部分は、 どの音源用のものでも同じようになっていると思いま す。またほとんどのものは今まで説明してきたものばかりですがお分かりでしょ うか。  さらに、リズムトラックである10トラック目と、エクスクルーシブデータが 入力されたトラック以外は、ほとんど同じようになっています。  それでは順番に見ていくことにしましょうか。 1 1: 60 480 0 0  まずこの部分は、先頭を1拍分空白にしてあります。なぜこのようにしてある かと言いますと、データの先頭には音源をリセットするためのコマンドが埋め込 まれているからです。「どこに?」と思われたかもしれませんが、ここで紹介し ているデータでは、17トラック目に入っているはずです。これは別に17トラ ック目に入れなければならないというものではなく、どのトラックに入れてもか まいません。詳しくはエクスクルーシブについて解説したときに説明するとしま して、ここではリセットがかかる間空白になっているんだと思ってください。  なおデータの2トラック目、3トラック目を開いてみますと、この空白がだん だんと大きくなっています。これは音源にかかる負担を少なくするための処置で す。  さてつぎに進みます。 1 2:PgBnkMs 10 0 0 1 3:PgBnkLs 10 32 0 1 4:PROGRAM 10 0  これは一つのセットとお考えください。三つで一つです。  ところで最後のは見覚えがありませんか?そうです。音色を切り換えるための 「プログラムチェンジ」です。  以前プログラムチェンジのお話をしたときに、これだけでは128種類の音色 しか選択することができないと言いました。そこで上記三つのセットです。こう することで、音源に内蔵されている音色をフル活用することができるようになる のです。  では具体的にどのようにして選択すればいいのかということなのですが、これ は音源により異なります。  ローランドのGS音源では、バンクセレクトMSB (コントロールナンバー0番) で、音色のバンクを指定します。 1 2:PgBnkMs 10 0 0  この部分が、バンクセレクトMSBの部分で、VELの値を変更することで設定しま す。  そしてSC-88以上の機種では、バンクセレクトLSB(コントロールナンバー32 番)は、旧機種の音源の音色を出すためのものとして使用されています。例えば バンクセレクトLSBの値を1にすると、SC-55マップの音色を出すことが可能にな ります。さらにSC-88pro以上では、バンクセレクトLSBの値を2にすると、SC-88 の音色になります。  つまり 1 3:PgBnkLs 10 32 1 でSC-55マップ 1 3:PgBnkLs 10 32 2 でSC-88マップとなるようです。  つぎにヤマハのXG音源についてお話しします。 こちらはバンクセレクトMSB、 バンクセレクトLSB、 プログラムチェンジ三つを一セットとして送信することに なっています。(つまり添付のセットアップ小節を使えば問題ないわけです。)  基本的にバンクセレクトLSB(コントロールナンバー32番) で音色のバンク を切り換えます。  そしておもしろいのが、バンクセレクトMSB(コントロールナンバー0番) の 値が0ではノーマル音色に、 127番にするとリズム音色になります。 また 126番ではSFX(効果音)が選択できます。  このように音源により音色の指定の仕方が違いますので注意してください。  そして 1 4:PROGRAM 10 0 ここは以前に説明しましたが、この行のGTの位置に音色番号を入れます。  なおこの行にカーソルを合わせ[HELP]キーを押すと、音色一覧が表示され、カ ーソルキーで音色の選択ができます。さらに音源コントローラ無しのレコンポー ザの実行ファイルをお使いで、上記バンクセレクトのメッセージが入力されてい る状態では、 [Rollup][Rolldown]キーで、 バンクも含めて音色の選択が可能で す。これについては後述します。  さてつぎに進みます。 1 5:VOLUME 10 7 100  現在開いているパートの音の大きさを設定します。 VELの値を変化させること で可能です。値が大きくなるほど音量は大きくなります。 1 6:PANPOT 10 10 64  ステレオで聞いたときの、音の配置を設定します。VELの値を変更します。 64 で中央で、64より値を小さくすると左寄りに、大きくすると右寄りになります。 1 7:EXPRESS 10 11 127  ボリュームと同じく、現在開いているパートの音の大きさを設定します。セッ トアップ小節ではボリュームで音のバランスを採り、このエクスプレッションで は曲中の音の強弱(表情)を付けるのに使用した方がいいでしょう。つまりコン サートにたとえるなら、ボリュームはミキサーの人が設定した音量、エクスプレ ッションは演奏者が出す音量になります。設定の仕方はボリュームと同じです。 1 8:REVERB 10 91 40  リバーブエフェクトの量を設定し、音の残響の量を決めます。 VELで値を設定 し、値が大きくなるほど残響効果が深くかかり、音が響きます。あまり残響を効 かせ過ぎますとお風呂で演奏しているような感じになりますので、程々に抑える ようにしてください。 1 9:CHORUS 410 93 0  コーラスエフェクトの量を設定します。VELで設定を行い、 値が大きくなるほ ど深くかかります。コーラスエフェクトをかけると、音が広がったようになり、 一つの楽器の音でも数人で演奏しているような効果が得られます。  以上がおおよそ基本的な設定です。  このあとには先月号で解説しましたピッチベンドレンジの設定がありますし、 もの他にはチューニングや音色のエディットなどといったものが入力されていま す。  セットアップ小節の解説は、今回はここまでとしておきたいと思います。 ======================================================================== ■ プログラムチェンジヘルプでバンクセレクトを活用する方法 ■ ========================================================================  プログラムチェンジが入力されている行にカーソルを合わせ、[HELP]キーを押 すと音色リストが表示されます。ここで[上下左右矢印]キーでプログラムチェン ジが変更できます。 また[Rollup]/[Rolldown]キーでバンクセレクトができま す。しかしこのバンクセレクト機能は、音源の種類により異なるために、音源に よってはうまく働かないことがあります。  そこで、音源コントローラ無し版のレコンポーザでは、 [Shift]+[Rollup]/[Rolldown]キーで、音源の選択ができるようになっています。 現在どの音源が選択されているのか確認するには、VDM100の画面読み機能を利用 して、画面の4行目を読ませてみてください。「SC-88Pro Vari0」などと書かれ ていると思います。最初の「SC-88Pro」は音源の名称で、つぎに書かれている 「Vari0」は、現在選択されているバンクを表しています。  さてここで[Shift]+[Rollup]を押して、さきほどと同じように画面の4行目を 読ませてみてください。音源の種類が変わったでしょう。このようにこのリスト に自分のお持ちの音源があればそれを選択することで、[Rollup][Rolldown]キー でのバンクセレクトを自分の音源に合わせることができるのです。  ところで、いったんこの音色リストを閉じ、再び呼び出すと、また最初に選択 されていた音源に戻ってしまい、自分の音源を見つけるために[Shift]+[Rollup] などを押さなければなりません。これはとてもめんどうですね。  実は、この音源リストは、レコンポーザがインストールされているディレクト リのなかに 「TONELIST」 というサブディレクトリがあり、このなかの 「TONENAME.TBL」というファイルによって管理されているのです。また音色リス トは同じディレクトリに、主ファイル名が音源名、拡張子がバンクナンバーとい うファイルで保存されています。 これらのファイルはテキストファイルですの で、DMなどのエディターで読んだり編集したりすることが可能です。  それではレコンポーザは終了させ、エディターを使って、TONENAME.TBLファイ ルの中身を見てみましょう。 ------------------------------------------------------------------------ SC88PRO,MSB,3 SC88,MSB,2 SC88-55,MSB,1 SC88PROD,MSB,0 SC88DRUM,MSB,0 SC55DRUM,MSB,0 MU80,LSB,0 MU90,LSB,0 MU100,LSB,0 MU100SFX,MSB,0 MU100-48,LSB,48 05RW,MSB,0 NS5R,MSB,0 GM,MSB,0 MIDIKG,MSB,0 SC55MK2,MSB,0 SC55,MSB,0 ------------------------------------------------------------------------  このファイルの書式は、まず最初の,(カンマ、までが音源の種類です。  そして一つ目の , から二つ目の , までが、その音源が音色のバンクを選ぶ ときに、 バンクセレクトMSB(Cc#0)で選ぶのか、LSB(Cc#32)で選ぶのかを記述 します。例えばGSの場合はMSB、XGの場合はLSBとなります。  最後に、二つ目の , から行末までですが、ここにはMSBでバンクセレクトを行 う音源の場合はそのときのLSBの値を、LSBの音源の場合はMSBの値を記述しま す。  SC-88で、SC-55マップを選択するときはLSBを1にすると説明しましたが、この ような場合ここに「1と書いておきます。  さて、TONENAME.TBLは以上のような書式になっているわけですが、レコンポー ザで音色リストを呼び出したときは、このファイルの先頭に書かれている音源が 選択されます。そして[Rollup]キーを押すごとに、つぎの行に書かれているもの が選択されていきます。  ですから、自分がよく使用する音源のものを先頭に持ってくれば、音色リスト を呼び出したときに、お好みの音源が選択されているというわけです。  例えばヤマハのMU100をお持ちの方は MU100,LSB,0 MU100SFX,MSB,0 MU100-48,LSB,48 という行を、ファイルの先頭の方に持ってきておくと大変便利になります。  またこれらのディレクトリのファイルを作成・編集することにより、ここには ない音源への対応なども可能になります。音色リストの記述の仕方については、 既存のものを参考にされるといいと思います。  この音色リストファイルの編集で、それぞれ使いやすい設定を工夫してみてく ださい。 ======================================================================== E-MAIL:kojiro.kuyo@nifty.com http://member.nifty.ne.jp/KUYO/ ========================================================================