始めようDTM 第16回 スペシャルコントローラ 九曜 弘次郎  先月までは、ドラム等も含め基本的な音符の入力法を説明してきましたが、ご 理解いただけましたでしょうか。とにかく知っている曲や好きな曲をいろいろと 入力して慣れることが必要だと思います。とにかくやってみてください。  さて今回はレコンポーザでのスペシャルコントローラ機能について解説しま す。  ほとんどのMIDI音源には、いろいろな楽器の音色が内蔵されています。またそ れぞれのパートに対して、音量やステレオで聞いたときの音の配置、ホールで演 奏したときのような残響効果などいろいろな設定が行えます。  これはMIDI音源に対して、プログラムチェンジやコントロールチェンジ、ピッ チベンドチェンジ、システムエクスクルーシブメッセージといったMIDI信号を送 信してやることにより、パソコン上からMIDI音源のさまざまな機能を呼び出すこ とができるのです。  これらのコマンドを送信するための機能を、レコンポーザでは「スペシャルコ ントローラ」と言っています。  少し難しい話しになりますが、MIDIレベルで見た場合はプログラムチェンジ、 コントロールチェンジ、ピッチベンド、システムエクスクルーシブはそれぞれ異 なったMIDIメッセージに属しています。しかしレコンポーザではこれらのMIDI音 源をコントロールするための機能をひとまとめにして 「スペシャルコントロー ラ」で送信できるようになっています。ですからユーザー側から見れば全て同じ ような機能に見えるため、これらの違いを意識しなくて済むということのようで す。  また、全てのMIDI機器が、全てのスペシャルコントローラに対応しているわけ ではありません。基本的にプログラムチェンジ、コントロールチェンジ、ピッチ ベンドに関しては、ほとんどのMIDI音源が対応しています。一方システムエクス クルーシブは一部のものをのぞき、音源によってばらばらです。  MIDI機器のマニュアルには「MIDIインプリメンテーションチャート」と呼ばれ るものが記載されています。これはそのMIDI機器がどのようなMIDIメッセージの 送受信に対応しているかという情報を記述したもので、たいていマニュアルの最 後の方に記載されています。  この連載では、主にたいていのDTM音源で共通に使用できるもの、 具体的には GM規格に含まれるもの、及びGS、XG規格で共通に使用可能なものを中心に書いて いきたいと思います。  難しい説明はこのぐらいにして、まずは実際に試してみることにしましょう。  まずMIDI音源で活用してみたいと思うのが、いろいろな音色の呼び出しではな いでしょうか。GMシステムレベル1規格だけでも、ノーマル音色で128種類の 音色が定義されていますし、最近のGSもしくはXG音源では1000を超える音色 が入っています。  それではレコンポーザを使ってMIDI音源の音色を変更してみましょう。  音色の変更は「プログラムチェンジ」というMIDIメッセージを送信することで 行います。  まずはレコンポーザを立ち上げ「MAIN COMMAND」の状態にしてください。  ここで[F3]」のキーを押し、トラック選択画面を開きます。  つぎに[上下矢印]キーを使用して、エディットを行うトラックを選択します。 ここではとりあえず1トラックを選択することにします。  目的のトラックにカーソルを合わせましたら[リターン]キーを押します。  ここまでの操作は今までの曲のエディットを行うときの同じ操作です。  つぎにスペシャルコントローラを入力したい位置にカーソルを移動します。こ の位置とは、何小節目の何ステップ目かということです。  例えば3小節目の最初から音色を変更したいのであれば、3小節目の1ステッ プ目にカーソルを移動させて、そこにプログラムチェンジを入力するわけです。  それではプログラムチェンジを入力して音色の変更をしてみましょう。  まずはエディット画面から[/]キーを押して、 スペシャルコントローラを呼び 出します。  画面は以下のようになると思います。 ------------------------------------------------------------------------ 1 1:SPECIAL CONTROLLER PgBnkMs : PROGRAM BANK MSB ( 0)[ ] PgBnkLs : PROGRAM BANK LSB (32)[ ] MODULAT : MODULATION ( 1)[5] PORTA T : PORTAMENT TIME ( 5)[ ] VOLUME : VOLUME ( 7)[6] PANPOT : PANPOT (10)[7] EXPRESS : EXPRESSION (11)[8] PEDAL : DAMPER PEDAL (64)[9] PORTAM : PORTAMENT (65)[ ] (省略) ------------------------------------------------------------------------  [上下矢印]キーを押すと「スペシャルコントローラなになに」と、選ばれたス ペシャルコントローラが音声出力されます。  ここでは音色を変えます。音色の変更は「プログラムチェンジ」というMIDIメ ッセージを送信することで行うことはさきほどから述べています。  ですから[上下矢印]キーを使用して「PROGRAM : PROGRAM CHANGE [G]」 と聞 こえるところで[リターン]キーを押します。  もしくは スペシャルコントローラの選択画面で、プログラムチェンジを入力 するためのショートカットキーである[G]キーを押しても入力できます。  いずれにしても、上記の操作を行うと、通常のエディット画面になり、カーソ ル行には「PROGRAM」と入力されるはずです。  そしてカーソルは「GT」のエディット位置にあり、ここには「0」 と入力され ています。  ここに音色番号を入力するわけですが、スペシャルコントローラからプログラ ムチェンジを呼び出したときには「0」と入っています。  カーソルは音色番号のエディット位置に来ていますので、ここで番号を入力し ます。入力できる値は0〜127の128種類です。  どの番号がどの音色に対応しているのかにつきましては、音源により異なりま す。  とはいえ、通常のDTM音源(GM対応音源)では、番号が定められています。  レコンポーザ3.0の場合は、 レコンポーザをインストールしたディレクトリの なかの「tonelist」というディレクトリのなかに「GM.000」というファイルが入 っています。  これはレコンポーザ上から参照されるファイルなのですが、テキストファイル になっていますので、通常のエディターで開いてみることができます。  このファイルを見ると ------------------------------------------------------------------------ Name0=Piano 1 Name1=Piano 2 ------------------------------------------------------------------------ などと書かれています。  つまり、0番はピアノ1、1番はピアノ2…などということが読み取れるわけ です。  これを参考に、お好みの音色を選択してみてください。  さきほどの 「PROGRAM」 と書かれた行のGTの位置に、 音色番号を書き込みま す。アコースティックギター(スチール)にしたいなら[25]と入力すればいいで すし、トランペットにしたいなら[56]と入力します。  以上がプログラムチェンジの入力手順です。 実際に音源の音色を変更するに は、データの再生をして、MIDI音源にプログラムチェンジの信号を送信する必要 があります。  ところで、レコンポーザでは上記のように直接音色番号を入力する方法の他に、 音色を一覧から選択して入力する方法もあります。  まずは上記を参考に「PROGRAM」を入力します。 もしくは既にさきほどの操作 で 「PROGRAM」が入力されていれば、そのステップにカーソルを持っていっても かまいません。  ここで[ヘルプ]キーを押します。すると音色一覧が表示されます。  [上下左右矢印]キーを押すと音色番号が選択され、選択された音色番号と音色 名が音声出力されるはずです。  さらに、フルキーボード上のキー、具体的にはアルファベットなどのキーを適 当に押してみてください。  どうですか?MIDI音源から音が聞こえてこないでしょうか。これはパソコンの キーボードがMIDIキーボードのようになるわけです。  またテンキーの[.(ピリオド)]キーをなんかいか押してから、 再びMIDIキー ボードになったフルキーボードをたたいてみてください。音量がアップしていな いでしょうか。 [.(ピリオド)]キーを押すとベロシティーが上げられ、音が大 きくなるわけです。  逆に[,(カンマ)]キーを押すと、音量が小さくなります。  また[SHIFT]+[. (ピリオド) ]キーを押すと音程が1オクターブ高くなり、 [SHIFT]+[,(カンマ)]で1オクターブ低くなります。  さてこの状態でさきほどの[上下左右矢印]キーを押して、フルキーボードで演 奏を行うと、音色が変化しますね。  このようにしてお好みの音色を選択します。「これだ!!」という音色が見つ かりましたら[リターン]キーを押します。  すると自動的にさきほどの「PROGRAM」のVELの位置に選択した音色番号が入力 されるということになります。  ところで、このプログラムチェンジは、0〜127までの番号しか入力できません でした。 つまりプログラムチェンジでは128種類の音色しか選択できないので す。  でも最近の音源は、もっとたくさんの音色が入っていますよね。  「それじゃあどうするのか」ということになるわけですが、これを解決するの が「バンクセレクト」です。  バンクセレクトにつきましては、また機会を改めて解説することにしまして、 とりあえずは「バンクセレクトを利用すれば、もっとたくさんの音色の指定がで きるんだな」ぐらいに思ってください。  さて、音色の変え方はこれで分かりました。それではその他にどのようなこと ができるのでしょう。  いろいろなパートの楽器を入力すると、それぞれの音野音量バランスを調節し たくなります。  「トランペットはちょっと音が大きすぎて他の楽器の音が聞こえなくなるか ら、ちょっと小さめに」とか「ピアノの音が全体的に他の楽器より音が小さくて 聞こえないから、もっと大きくしたい」と言うことがよくあります。  MIDIでそれぞれのパートの音量を調節する方法には「ボリューム」を使用する 方法と「エクスプレッション」を使用する方法があります。  なぜ同じ音量を調節するためのものが二つもあるのかと疑問に思われる方もお られるでしょう。  一般的にボリュームは各パートの音量バランスを調節するのに使用し、エクス プレッションは、演奏に表情を付けたりするのに使用されます。  ですからさきほどの「トランペットは大きいからちょっと小さく」などといっ た場合にはボリュームを使用します。  ボリュームの入力方法は、さきほどの音色を変更したプログラムチェンジの入 力とほぼ同じです。  まずボリュームを入力したい位置にカーソルを合わせます。  ここで[/]キーを押します。  [上下矢印]キーで「VOLUME : VOLUME ( 7)[6]」と聞こえるところに持って行 って[リターン]キーを押します。もしくは、スペシャルコントローラの選択画面 で[6]のキーを押しても同じです。  すると通常のエディット画面に戻り、カーソル位置に「VOLUME」と入力されま す。  さきほどプログラムチェンジではGTの位置に値を入力しましたが、ボリューム の場合はVELの位置にボリュームの値、つまり音の大きさを入力します。 入力で きる値は0〜127で、数字が大きいほど音が大きくなります。  以上がボリューム値の入力方法です。  なおこのときGTの位置には「7」と入っていると思いますが、 これはボリュ ームを表すコントロールチェンジの番号で、 MIDI規格で決められているもので す。ここはレコンポーザが自動的に入れてくれますので、書き替えないでくださ い。ここを書き替えると別のコントロールチェンジに変更されてしまいます。  以上がボリュームの設定手順です。  いかがでしょうか。エクスプレッションを始め、多くのスペシャルコントロー ラは同様の手順で呼び出して設定することが可能です。  以下簡潔に各機能の解説と呼び出し方を記述します。ここにあげるものはMIDI メッセージでは全てコントロールチェンジに属するもので、 設定値はVELのとこ ろに記述します。 <エクスプレッション>  ボリュームと同様音量を調節します。  スペシャルコントローラ一覧から「EXPRESS : EXPRESSION (11)[8]」を選択す るか、[8]のキーで呼び出します。  設定範囲は0〜127で、数字が大きくなるほど音量が大きくなります。 <パンポット>  ステレオで聞いたときの楽器の位置(音の定位)を指定します。  スペシャルコントローラ一覧から「PANPOT : PANPOT (10)[7]」 を選択する か、[7]のキーを押します。  設定値は0〜127で、64が中央(真ん中)になり、64より値を小さくするほど左 寄りに、大きいほど右寄りになります。 <リバーブ>  リバーブと言うのは残響のことで、これをかけるとあたかもホールで演奏して いるかのような響きのある音になります。逆にあまりかけ過ぎると、お風呂場で 演奏しているようになり、音がはっきりしなくなるので注意が必要です。  スペシャルコントローラ一覧から「REVERB : REVERB SEND LEVEL (91)[ ]」 を選択します。  値が大きくなるほど効果が深くかかります。 <コーラス>  コーラスというと、 何人かで集まって 「はぁれるやぁ」 とかするやつです ね!! でもMIDI音源が「はぁれるやぁ」って言うわけではありません!!  というのはおいておきまして、MIDI音源でのコーラスというのは、一般に言わ れるコーラスと同じで、何人かで集まって同じ楽器を演奏したときのように、音 に広がりや厚みのある効果をもたらすものです。  スペシャルコントローラ一覧から「CHORUS : CHORUS SEND LEVEL (93)[ ]」 を選択します。  設定範囲は0〜127で、数字が大きくなるほど効果が深くかかります。 <モジュレーション>  ビブラートの深さを調節します。 ビブラートというのは震えるような感じで す。寒いときなどぶるぶる震えながら声を出すと、声にビブラートがかかります ね。(ちょっと違うか?)  スペシャルコントローラ一覧から「MODULAT : MODULATION ( 1)[5]」を選択す るか、数字の[5]キーを押します。  設定範囲は0〜127で、数字が大きくなるほどビブラートが深くかかります。 <ダンパーペダル>  ダンパーペダルは、ピアノの足のところにある三つ(もしくは二つ)のペダル のうちの1番右側のペダルで、音を響かせるのに使用します。このペダルを踏ん だまま鍵盤を弾いて話しても音は消えずに持続します。「サスティーンペダル」 「ホールドペダル」ともいいます。  スペシャルコントローラ一覧から「PEDAL : DAMPER PEDAL (64)[9]」を選択 するか、数字の[9]キーを押します。  設定範囲は0〜127で、0でペダルを話した状態、127でペダルを踏んだ状態とな ります。音源によってはもっと細かく設定できるものも存在します。 <ソステヌートペダル>  ソステヌーとペダルは、ピアノの三つあるペダルのうちの真ん中にあるペダル です。家庭用のアップライトピアノのなかには、このペダルのないものもありま す。このペダルはさきほどのダンパーペダルと似ているのですが、ペダルを踏ん でいるときに押さえられた鍵盤の音のみをホールドするもので、ダンパーペダル のようにペダルを踏んだあとに発音された音には効果がありません。ですからコ ードなどを押さえてからソステヌートペダルを踏み、そのあとにメロディーなど を重ねたりしても音が濁らずに演奏できるというメリットがあります。このペダ ルは別名「コードホールド」とも呼ばれています。  スペシャルコントローラ一覧から「SOSTEN : SOSTENUTE (66)[ ]」 を選択し ます。  設定範囲は0〜127で、0でペダルを話した状態、127でペダルを踏んだ状態にな ります。 <ソフトペダル>  ソフトペダルは、ピアノの三つ(もしくは二つ)あるペダルのうちの1番左側 のペダルです。このペダルを踏んで演奏すると音が小さく、また柔らかい音にな ります。ピアノでは「弱音ペダル」と呼ばれています。  スペシャルコントローラ一覧から「SOFT : SOFT PEDAL (67)[ ]」を選択し ます。  設定範囲は0〜127で、0でペダルを話した状態、127でペダルを踏んだ状態とな ります。  おおよそこのあたりがよく使用されるものではないかと思います。  他にもたくさんのスペシャルコントローラが並んでいますが、少し使い方が複 雑なものなども存在しますので、これらは追って解説していきたいと考えていま す。 ======================================================================== E-MAIL:kojiro.kuyo@nifty.com http://member.nifty.ne.jp/KUYO/ ========================================================================